「不二」 過去の記事  【紹介期間:平成29年4月〜】

 掲載号等  【第9号】:昭和57年6月発行 

 毒語 青年僧へ期待
 東福僧堂師家 福島慶道老師






青年僧の向上
先ず第一に「常に自己を磨くことを忘れるな」と言いたい。最近は雲水の僧堂在錫期間が極めて短い。各派の宗制も一考を要すべ
きではないかと思うが、平均して大学卒僧堂歴二年で住持職が取得でき、早くも若き住職、副住職の誕生ということになる。十年
十五年と在錫している久参底の衲僧もないではないが、極めて稀なことであり、概して在錫期間の短いのが悲しいかな最近の傾向
である。勿論僧堂での修行だけが修行ではない。住職又は副住職と成って在家を教化して行くことも修行であり、むしろ十字街頭
にあって灰頭土面の布教活動をする修行の方が至難といえよう。しかし在家を教化するためには、先ず自分が禅僧としての自覚と自
信を持たなければならなぬ。そのために少なくとも臘八大摂心三回の経験は最低限度要求されないだろうか。僧堂三年の修行は、
禅僧の基礎作りとしては絶対条件と思う。そこで青年僧各位に望みだいことは、僧堂歴の長短に拘らず青年僧対象の厳しい研修
会の実践である。僧堂の制間に僧堂に於いて研修するのも一案と思う。各寺院持回りの研修会も、それなりに大いに意義はあるで
あろうが、青年僧が修行未熟を補うための厳しい研修会は、僧堂を會場として再行脚の覚悟でやらねばならぬと思う。この意味にお
いて臘八大摂心への参加も好ましいことであり、勿論相当の覚悟は要るが臘八大摂心の僧堂めぐりなどグッド・アイデァと思うがどう
であろうか。青年僧の真摯な発願と熱意によれば、臘八大摂心参加を認める僧堂も決して少くはないと思う。青年僧の再行脚とし
ての臘八大摂心参加は、現役の新到雲水達にも大いに刺激となり、相互に好い結果が生まれると信ずる。要するに自己の修行の
未熟を直視し、「更参三十年」の意氣に燃えて何らかの形で、厳しい研修会を実践且つ継続していって頂きたいと思う。青年僧の
質の向上は、そのまま教団の将来を左右する重大事である。


青年僧に何を期待するか
次に私は青年層の新鮮な思考力と活発な行動力に期待したい。どの社会においても共通のことながら、青年層には中高年層にな
い新鮮な思考力の湧出がある。われわれの教団の場合、現役住職の平均年令は他の社会に較べて比較的に高い。しかも教団の
特性として伝統を重視する傾向が強い。それはそれなりに利点もあるが、指導理念が固定化する憾みなきにしもあらずであり、それ
だけに青年僧侶らの新鮮な思考力は教団に生気と活力を呼ぶことになると思う。教団にとって必要と思われる意見は遠慮無く主張
し、教団にとって有意義と思われる計画はどしどしと実行していって頂きたい。軽率な行動は自重しなければならぬが、慎重な行動に
おける若さゆえの失敗を恐るべきではない。失敗に気付けば是正すればよい。壁に突当れば再挑戦すればよい。行動力を伴う発言
は強い。それは若者の特権でもある。青年僧の意見であっても、それが教団の将来を真摯に熟慮しての正論であれば、大いに傾聴
されるであろう。特に各派共に副住職の発言の場が殆どない。「臨済宗青年僧の会」が副住職達の大いに活躍できる場であると共
に、彼等の意見を教団に向って代弁できる組織であって欲しいと思う。しかも現実的には各県、各地区で小さくまとまらず、中央本
部を頂点に常に大同団結し、「臨済宗青年僧の会」は大組織として臨済宗教団の一翼を担うだけの存在になって頂きたい。今やわ
れわれの教団には「若さ」が要求されていると思う。『臨済宗青年僧の会』はその要求に応えうる組織であらねばならぬと思う。


国際感覚を
第三に私は、青年僧各位に大いに国際感覚を身につけて、国際人としての宗教家に育って欲しいと思う。そのためには機会を見出
しては海外に出、外から日本を見直し、外から日本の仏教界を観察してもらいたい。日本の外に自分を置いて日本を見直す時、自
己の「世界観」は大きな飛躍と展開をするであろう。「世界観」の飛躍は、そのまま「人生観」「宗教観」のスケールを大きくすることに
気付くであろう。インドへの仏跡巡拝も、中国への祖跡巡拝も、国際感覚を養う絶好の機会ではあるが、単に東洋にとどまらず、西
欧の若き宗教家達との交流も深めてほしい。特に今や日本の禅は、世界に謗りうる精神文化の一つとして、世界から熱い注目を浴
びている。「臨済宗青年僧の会」が世界に向って羽摶きうる、そんな会として育つことを期待する。


臨済院塔主和尚の派遣を
昨秋、自分も「臨済宗青年僧の会」訪中団と相前後して訪中したが、臨済塔、趙州塔の荒廃がひどく、早期の改修が望まれ、日
中友好臨済黄檗協会もその改修資金集めに鋭意努力中のようであるが、塔主和尚の常在しない臨済院、越州観音院は何とも
淋しい。日本臨済僧の中から輪番制ででも塔主和尚を派遣できないものであろうか。「臨済宗青年僧の会」会員の中に、もし有志
あらば日中友好協会に働きかけ、それが実現に奔走してほしい。