「不二」 過去の記事  【紹介期間:平成29年2月〜】

 掲載号等  【第42号】:平成2年10月発行 


  向嶽寺派管長 宮本大峰猊下


 「観よ」


  意識を持って行動を (その2) 





歴参のすすめ

私自身が僧堂を五ヶ所も移ったからという事で申し上げるわけではありませんが、できれば歴参をしてもらいたい。現在では、僧堂生活は、だいたい二年か三年でやめてしまいます。これには御自坊の事情ですとか、自分の心境の変化ですとか色々事情があるでしょうが、少なくとも今日では、寺院の経済的な面から、早く帰って勤めに出なければならない様な事情は、段々少なくなって来ています。もちろん、一人の師家について十年十五年と長く修行するのであれば大変尊いことですが、そうでなければ、私は歴参することをお勧めいたします。

色々な家風を学ぶということは大変大事だと思います。歴参の過程で、新たな所得があるでしようし、自分の願心が更につよくなって、もっと修行しようという気持ちになるかもしれない。そういう意味でも私は歴参をするべきだと思います。さまざまな道場のさまざまな老師さんからよいところを自分なりに学び取って行くことは、後の自坊での寺院活動に大いに役立ことです。



布教のありかた

カルチャー教室で何千何百とある講座の中から白分のすきな講座を楽しく学んでいる今の社会ではありきたりで新鮮味のない話しでは訴える力が大変弱いと思います。もちろん布教師さんでも、本当に思わず感動をおぼえるお話しをされる方がおられますがそれを真似ての、二番煎じ、三番煎じでは、今の耳の肥えた檀信徒には通じません。みんな欠伸してますよ。五臓六腑に染みる様な方法を使わないといけない。喋る事ばかりでなくともよいんです。どんな方法でもよいから、自分なりの法材を見つけて、しかも広い角度から法材を選んで行なえばよいんです。



影響力を持て

今都会では、業者がすばらしい葬式をやってくれます。坊さんなんか用無しです。ですから葬式仏教に胡座をかいている様な時代じやないです。檀家制度の崩壊も出始めていますし、昔みたいに、檀家にあれやれ、これやれと言えなくなって来ています。確かに葬式も、法事も、親切にやってあげなければいけないが、それ以上に、具体的な布教活動といった事を中心に、行動しなければいけないのです。それも、檀信徒だけでなく、社会教育の場に出て行かなければいけない。今日、社会教育、家庭教育を宗教者が大いに担うべきだと思います。

今、子供達には問題が非常に多い。この子供達に大きく影響する家庭教育に係ることが出来るのは宗教者だと思いますし、それには、影響を与える行動が必要なのです。



具体的な行動を

たとえば、以前「不二」に載っていました山梨県富沢町の廣福寺矢守師は、今ここを舞台に一つの大きな輪を広げようとしておられます。矢守師は日に一度向嶽寺に来て布教の形で、漢方の治療をしていますが、師は、人の体の苦しみを抜く治療をしながら同時にさまざまな相談を受けています。仏教と深い関係のある東洋医学で、肉体の治療をし、宗教者の立場で、人の心の治療をしているのです。そして又、師匠である、伊藤真愚さん、この方も円覚寺の朝比奈宗源老師の下で何十年も坐禅をした方ですが、この方とコンビを組んで、宗教と東洋医学の両方を学んだ人の集まりを作ろうとされています。

とにかく、皆さんには、どんな法材を用いてもいいですから、少しでも社会に影響力のある行動を起こして頂きたい。「あれは目立ちたがりやで・・・」なんて言われる位に。そんなもん勝手に言わせて置けば良いんです。

それが影響を与えている事なんですから。大いに行動、実践して頂きたいと思います。